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プリーツ(折り目)のメカニズムとは

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主に女性であればスカートにあるプリーツ、男性であればスーツのパンツにあるセンタープリーツなど、折り目の入った衣服は立体的なデザインを表現するうえで非常に馴染みのあるアイテムです。
ところが、購入時にはしっかり折り目の入った状態でも、着用を繰り返したり雨で濡れたりなどすることでプリーツが消えてしまうことがあります。
このページでは、このような特徴を持つプリーツとは一体どのようにして出来ているのかを解説します。

豪雨でプリーツが消える

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近年ゲリラ豪雨など突然の大雨に見舞われて、傘をさしていてもビショビショに服を濡らしてしまう場面があります。
例えばビジネスマンがスーツを着て外出していた時にゲリラ豪雨に遭遇してしまい、スーツをかなり濡らしてしまった場合、脱ぐ訳にはいかずそのまま着続けて自然乾燥するのを待っていたとします。
すると、パンツのピシっとしたプリーツが消えてしまい、スーツの醸し出す風格が損なわれてしまっていて、これから大事なプレゼンなのに困った!なんて経験はありませんか?

では、一体何故プリーツは消えてしまったのでしょうか。

ウールのスーツの場合、ウールという素材の特徴からもともと水に弱い繊維と言われています。
その為、水である雨がウールの生地にしみ込むことで元々あったカタチ、つまりプリーツの折目が一度リセットされてしまいます。本来であれば乾く前に折目をキープさせておき、その状態のまま完全に乾燥するのを待てば折目は残っていたのですが、外出時にそのようなことはなかなか出来ないのが現実です。そのような理由から、プリーツは消失したと考えられます。

ではもう少し詳しく見て行きましょう。

プリーツ(折り目)の作り方

衣服にプリーツを作る方法は主に3種類あります。

(1)プレス(熱)仕上げのみ
(2)シロセット加工
(3)リントラク加工

プレス(熱)仕上げ~水素結合の利用~

おそらく最も馴染みのある方法といえるのが、家庭でも行われるアイロンによる方法です。
ところが「どうも自分でアイロンをかけて折り目をつけてもすぐにあまくなる...何故クリーニング店のような仕上げが出来ないのか?」といった経験や疑問はありませんか?
アイロンプレスの技術はもちろんですが、その理由の一つにはアイロンをかける前に与える水分量が影響していると考えられます。

では、何故水分やその量が影響するのでしょうか。そこでまずは、繊維の分子構造の話からお話します。

水素結合とは?

素材がウール(羊毛)や綿などの場合、その分子構造の一部では「酸素原子」と「水素原子」間で形成されるような「水素結合」という状態になっています。この「水素結合」には大きな弱点があり、水中では結合が切断してしまうのです。言い換えれば、分子構造間での繋がりが切断することにより、フリーな状態になってしまい、乾燥時には再び水素結合される訳です。

つまり水分により分子がフリーな状態になる為に、ウール(羊毛)は特にわずかな力でも伸びやすい状態に変化しており、これがウール(羊毛)は水に弱いと言われる理由でもあり、洗濯シワの起きる理由でもあります。
しかし、この素材の弱点を逆手に取ることでプリーツ(折目)を付けることが出来ます。意図的にわざとシワをつけるイメージです。

方法は一度わざとフリーな状態(=水素結合の解除)にして、アイロンの熱で水分を飛ばしつつ生成してくる水素結合を利用してプリーツ(折り目)を付けるという方法です。

適切な水分量

主な繊維の公定水分率
繊維公定水分率(%)
ウール(羊毛)15%
綿8.5%
ポリエステル0.4%
では、水分量についてお話する前に知っておいて頂きたいのが、繊維には「公定水分率」といって、温度20度、湿度65%の時の環境下で繊維が吸湿する水分量を公式に定めた値があります。
つまり、この公定水分率以上の水分を与えることで水素結合によるプリーツ(折り目)の効果を得ることになります。





ただし、プレスによりプリーツ(折り目)がしっかりついても、一たび雨などにより濡れてしまえば、水素結合は切断される(プリーツが消滅する)のは言うまでもありません。

シロセット加工~シスチン結合の利用~


シロセット加工とは、CSIRO(豪州連邦科学産業研究機構)で開発された特許技術で、毛髪にパーマをかける原理を利用したウール製品の加工法です。

特徴としては次のようなことが可能です。

  • ウールの風合を損なうことのない自然な仕上がりで、シャープな折り目を形状記憶させることが出来る。
  • ウール100%製品、またはウール高混率製品(合成繊維混)にすぐれた効果を発揮する
  • 雨に濡れて折り目があまくなっても、たっぷりと霧を吹きハンガーに吊るしておくだけで、折り目が回復する。
  • ドライクリーニング処理、水洗い処理後の耐久性に優れている。
  • 折り目加工の効果はワンシーズン持続する。

方法としては、シロセット加工液(最初につけるパーマ液のようなもの)を生地に染み込ませ、水素結合とは異なる「シスチン結合」と言われる本来持つ強い結合を切断します。この「シスチン結合」は水の影響を受けにくい点がポイントです。
シスチン結合を切断し、かつ適切な水分を与えた状態でプリーツ(折り目)を作り乾燥させます。すると、プリーツのカタチを保持した水素結合以外に、もう一つシスチン結合も同様のカタチを保持した状態になります。
よって、仮に濡れてしまっても水素結合は切断されながらも、「シスチン結合」はカタチを維持していることになります。これが「シロセット加工」です。

下記のイラストは、プレス(熱)仕上げとシロセット加工の違いを表したものです。

↑クリックで拡大出来ます
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リントラク加工

リントラクは、ザ・ウールマーク・カンパニー(I.W.S.)が開発した、専用樹脂を生地の裏地に塗布する加工です。

特徴は下記の通りです。

  • ほとんどの繊維素材に使用できる。
  • ドライクリーニング処理、水洗い処理後の耐久性に優れている。
  • 折り目加工の効果はワンシーズン持続する。
  • 薄地のもの、モヘヤなどの繊維がかたいもの、透けやすいものには適さない。

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加工していないプリーツ(折り目)は自然にあまくなります!

衣服のプリーツ(折り目)は、主に以上の3つの方法のいずれかによって行われていますが、プレス(熱)によるプリーツは、日常生活の中でどうしてもあまくなります。
雨だけでなく、身体から発する汗といった水分はもちろん、椅子に座ることでプリーツがつぶされてしまったり、歩行によって生地が張ることで自然とあまくなります。

また、例外もありますが販売されているプリーツスカートやスラックスなどの折り目は、プレスによる処理である場合が多く、常に新品時の状態をキープするのは困難です。

手間をかける時間をクリーニングに代行してもらう

自分でアイロンなどを用いてプレスすることでプリーツを回復させることは可能ですが、時間がかかったり、二重線にせず綺麗に仕上げる技術も必要になります。

加工してもらえるか聞いてみる

プレス以外の方法で、シロセット加工とリントラク加工とがありますが、各々の特徴を理解していずれかの加工を施してもらうのも良い方法です。
現在クリーニング店の多くでは、加工サービスも行っている為、お店の人に可能か聞いてみるのも良いかもしれません。
外回りの多いサラリーマンなどは特にシロセット加工をスーツパンツに施しておくと、非常に便利です。

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