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取り扱い絵表示に見る問題点

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近年、食品偽装問題や不正表示といった、企業の社会的責任が問われる事件が注目されています。そして、マスコミの多くは人の健康被害のある食品を主にメディアで取り上げ、報道する傾向があります。
しかし、世の中にある不正表示や誤表示は、衣服に縫い付けられている取扱い絵表示においても例外なく存在しています。このページでは、取扱い絵表示に見る問題点を紹介します。

衣服の誤表示・粗悪品は意外に多い!?

普段の暮らしで、常に「これは不良品ではないか?」「これは誤りではないか?」といったように、ひとつひとつ疑いを持ちながら製品や商品と接している方は少ないのではないでしょうか。つまり、不良品や誤りというのは、問題が露わになった段階にならなければ気付かないことも多く、また、メーカーもリコール対象として商品回収などを行わないケースが多いかもしれません。
一方、リコール対象品として商品回収を行おうとする場合、その商品を購入した人に、事実を伝える為に費用を費やし広告を出したりするなどし回収に努める企業もありますが、各々の理由により全ての企業が行っていると言えないのが現状だと考えられます。
そして何より、消費者が不良品であることに気付かないままで過ごしてしまう、という問題も見逃せない現状だと言えます。

衣服においても、同様に気付かないまま問題が見過ごされ、クリーニング事故が発生し、商品に対して問題が発覚というケースが多々あります。

例えば「リコールプラス」というWEBサイトがありますが、このWEBサイトを見ると、世の中には意外に多くのリコール品が存在するのが分かります。そして、その中に「衣服」も例外なく存在しているのが、紛れもない事実なのです。

参考:日々更新される衣類のリコール対象品(リコールプラス)

表示ラベルの内容は、どのようにして決まるのかをご存知ですか?

表示ラベルには下記の3つの要素を記載することが法律で義務付けられています。


・取扱い絵表示
・組成表示
・表示者名


そして更に、注意が必要な商品であれば「付記用語」といって、注意事項が記載されます。

参考>>表示ラベルの見方

おそらく多くの消費者は、衣服に縫い付けてある表示ラベルの記載内容は、アパレル業界共通のルールや試験に基づいて決定されたうえで販売されていると考えている方も少なくないのではないでしょうか。また、アパレルメーカーの社内に検査機関があり、そこでの厳しい試験結果に基づき、取扱い絵表示や注意事項が決まり、量産化されるという段取りを想像する方もいらっしゃるかもしれません。

しかし実情としては、各アパレルメーカーの慣習や風習に基づき、表示ラベルの記載内容における決定方法や表現はバラバラなのです。
当然、しっかりと製品試験を行い厳密なデータに基づいて販売するアパレルメーカーもありますが、主なアパレルメーカーの決定方法として、生地メーカーからのデータや付属品の特徴などを参考に、アパレルメーカーの社員が独断で決定しているケースが多いようです。

更にこの実情は裏を返せば、万が一アパレルメーカーに洗濯や取扱い方法に関する知識が無かったり、意識が低い場合においても、それなりに表示を付けて(または、不適正な表示で)販売することがまかり通ってしまう訳です。

では、何故このような現状なのでしょうか?

アパレル業界の構造的問題

短期間の製造販売が矛盾を引き起こす!?
日本アパレル産業協会は、この実情を危惧し、標準化を進める動きを示しています。
同協会が作成した『生地の品質に関する「試験要領」と「試験成績報告書」の標準化』によれば、アパレル製品の企画・生産スケジュールはかつてない程の短縮化が要求され、品質試験をする間もなく量産されてしまうケースが散見されることを指摘し、その具体的な状況を以下のように記載しています。
本来、生地メーカーやコンバーターから、アパレルが生地の提案を受ける度に試験データが提示されればよいのですが、アパレル毎に要求される試験項目や試験方法が異なっていては、生地メーカーが実施する試験は「発注後」ということになってしまいます。発注後に試験を実施した場合、その結果をアパレルが入手できるのは2~3週間後になり、すでにこの頃には量産投入されていることも十分あり得る訳です。

参考:日本アパレル産業協会 品質管理小委員会

多品種小ロットによる弊害
現在主に私たちがアパレルショップで購入する衣服は、その多くが「多品種小ロット」という考え方のもと、生産されていると言われています。「多品種小ロット」というのは、「種類を多くする一方、ひとつの商品の生産数は少なくする」という意味です。
ショップで気に入った衣服を見つけて購入しようとサイズを聞くと、販売員から「在庫がありません」という返答をされたケースはありませんか?また、街を歩いて同じ衣服を着る人に出会う確率も低いと思いませんか?まさに、この状況が「多品種小ロット」を象徴している事のひとつだと考えられます。
「多品種小ロット」による生産が行われる要因は、ファッションにおける多様化した現代人の価値観とそれに基づく消費者ニーズを満たすことを使命にした、多くのアパレル企業と我々消費者の欲求が生み出した構造です。
そして、そのことによって、「早く」そして「豊富なラインナップの衣服」をショップに並べる為に、ひとつひとつ製品洗い試験をしている暇がない、という弊害を生みだしていると考えられます。
低価格実現に対するコストカット

近年における衣服の低価格化に対し、アパレル企業はあらゆるコスト削減に努め、実現化を図ろうとしています。そうした背景の中には、ひとつひとつ製品洗い試験を行う費用を削減することによって実現しているケースもあり得ます。

試験方法の問題点~試験をする本質的意味とは?~

これまでの記述から、気付いた方もいるかもしれませんが、商品を販売する前に行われるべき「試験方法」は、たとえ試験を行っていたとしても、生地試験であり製品試験ではない可能性が高いことが分かるかと思われます。
そこで考えて頂きたいのは、衣服というのは着れば汚れます。そして、汚れを落とす為に洗濯やクリーニングを行い、再び気持ち良く衣服を着るのが一般的です。
一方、商品を売る側が行う試験の多くは、汚れの無い新品の生地サンプルを使用して、「商品が洗えるか?」だけに注目して試験をしています。

変ではありませんか?

表示ラベルに「品質表示」「取扱い絵表示」や「付記用語」を記載する意味は下記のような目的があるはずです。

・素材の持つ特性や技術限界を事前に消費者に理解してもらえる
・商品の着用や洗濯による事故を未然に防止できる

我々消費者が着用や洗濯するものは、生地ではなく生地から形作られた衣服であり商品であるはずです。本来行われるべきことは、衣服である商品の着用や洗濯に対して試験を行うことが、本質的な試験だと考えます。
生地は単純素材ですが、衣服は生地同士を縫いつけたり、加工を施したり、付属品が付けられたりなど、決して単純な構造とは言えません。更に、消費者によって着用状況や保管状況は異なり、同じ衣服であっても、汚れ方や変化の仕方は様々です。

よって、「商品が洗えるか?」ではなく「衣服に対しその洗い方で適切に汚れが落とせて、かつ、事故を未然に防止できるか?」を試験することが、企業の社会的責任だと思います。


アパレルの不適切な表示

現在日本には実に多くのアパレルメーカーが存在します。人気セレクトショップなどで販売されている衣服の表示ラベルを見ても、知名度のない企業の商品であることも往々にしてあります。もちろん、決して知名度だけが商品の良し悪しを決定付ける訳ではなく、アパレルメーカーは皆さんが思っているより沢山あり、表示ラベルの内容も適切なものもあれば不適切だと考えられる内容もあるのです。更に掘り下げれば、商品の企画段階でストップしなければいけないものもあるのです。

タンブラー乾燥禁止を「自然乾燥」という言葉にしている場合。

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問題点
海外製品の場合は、日本の法律に基づいた表示も縫い付けることが義務化されており、この場合は義務は果たしています。ところがよく見ると不適切であることが分かります。
「水洗い不可」で「ドライクリーニング可」となれば、クリーニング店でのドライクリーニングを指示していることになりますが、ドライクリーニングの乾燥工程は、溶剤を空気中へさらさない為に自然乾燥は出来ません。にもかかわらず、このような表示やこのような商品を作ってしまうのは、明らかにメーカー担当者の知識不足かモラルの問題です。

法律を無視する悪質な例

不正表示例4海外製品であれば、日本の規格に沿った取扱い絵表示を記載しなければならないところを、絵表示ではなく文字で表現をしてしまっています。また、表示者名の記載がなく、製造者が分からない状態で、非常に悪質と言えます。


法律を無視する悪質な例
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一見、日本の法律に基づいた表示がされているように思えますが、絵表示を見ると勝手にメーカーが作った絵表示が存在している。

注意表示の不備

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ダウン商品に付いていた表示ラベル。タンブラー乾燥禁止の注意表示が無い為、タンブラー乾燥を行ったところ、収縮が生じた。

組成表示が無い例

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使用素材を明記せず家庭用品品質表示法を犯している悪質な例。

洗えない商品の場合
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水洗いもドライクリーニングでも洗えない商品。それにもかかわらず、「洗濯は専門店にご相談ください」と矛盾した表記をする悪質な例。

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上の事例と同様。洗えない商品にもかかわらず、「洗濯は専門店にご相談ください」と矛盾した表記をする悪質な例。更に、洗浄不可でもアイロン可を意味する、不明瞭な内容。

よくある「専門店にご相談ください」パターン

たまに表示ラベルで「専門店にご相談ください」といった内容の書き込みを見たことはありませんか?しかし実態としては、クリーニング店側は製造者(メーカー等)から、相談に応じることが出来るだけの商品情報をほとんど受けていません。
今回の事例のようなパターンは、"全く洗えない商品を作っておきながら"洗濯は専門店に相談してください、という非常に無責任なパターンと言えます。
誤った取扱い絵表示をしている例

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ドライクリーニングが出来ない塩ビ素材を使用しているにもかかわらず、「塩ビ使用」を表記しないばかりか、ドライクリーニング可と表記している誤った例。洗濯やクリーニング知識の乏しい製造者によることが推測される。

海外表示と日本表示が異なる例

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日本表示ではドライクリーニング表示を明記していない。
更に、高温プレス可の表記をしながら、付記用語では「高温プレスは避け~~~」という矛盾した表記をしている。

海外表示のみの例

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海外商品を日本で販売する場合は、法律により日本の表示を縫い付けることが義務化されているにもかかわらず、違法に行わない悪質な例。


まとめ

誤表示や不正表示の問題は、その背景と考えられているアパレルの構造的問題を踏まえると、根深い問題であることが分かるのではないでしょうか。
私たち消費者が、「より安く」「より早く」「より可愛い」「よりカッコ良い」衣服を求めることも、この問題を引き起こす要因の一つなのかもしれません。

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